Release Information

初回限定盤
PCCA.06170/2CD/3,500円+税
通常盤
PCCA.06171/CD Only/2,600円+税
[収録曲]
1. 十月(いちおう捨てるけどとっておく)※ダウ90000 第4回演劇公演「いちおう捨てるけどとっておく」エンディングテーマ
2. 駆ける ※サッポロビール「第96回箱根駅伝用オリジナルCM」CMソング
3. ODDTAXI feat. PUNPEE ※テレビアニメ「オッドタクシー」OPテーマ
4. 粗悪な月あかり
5. この夜に向け ※「大きなサイズの店 フォーエル」 CMソング
6. 標識の影・鉄塔の影 ※テレビ東京ドラマ25「絶メシロード」主題歌
7. 架空の帰り道 ※テレビ東京ドラマ25「絶メシロードSeason2」主題歌
8. Aを弾け
9. 私が夢からさめたら
10. 背を撃つ風 ※Paraviオリジナルストーリー「最愛のひと~The other side of 日本沈没~」イメージソング
11. しるしをたどる ※テレビ大阪開局40周年「名建築で昼食を 大阪編」エンディングテーマ
12. 窓辺にて ※映画「窓辺にて」主題歌
13. 海岸線再訪 ※JBL『Tour Pro+ TWS』WEB CMソング
[特典CD収録内容](初回限定盤のみ)
「SING A SONGS」
全楽曲弾き語り音源を収録
1. 十月(いちおう捨てるけどとっておく)※ダウ90000 第4回演劇公演「いちおう捨てるけどとっておく」エンディングテーマ
2. 駆ける ※サッポロビール「第96回箱根駅伝用オリジナルCM」CMソング
3. ODDTAXI feat. PUNPEE ※テレビアニメ「オッドタクシー」OPテーマ
4. 粗悪な月あかり
5. この夜に向け ※「大きなサイズの店 フォーエル」 CMソング
6. 標識の影・鉄塔の影 ※テレビ東京ドラマ25「絶メシロード」主題歌
7. 架空の帰り道 ※テレビ東京ドラマ25「絶メシロードSeason2」主題歌
8. Aを弾け
9. 私が夢からさめたら
10. 背を撃つ風 ※Paraviオリジナルストーリー「最愛のひと~The other side of 日本沈没~」イメージソング
11. しるしをたどる ※テレビ大阪開局40周年「名建築で昼食を 大阪編」エンディングテーマ
12. 窓辺にて ※映画「窓辺にて」主題歌
13. 海岸線再訪 ※JBL『Tour Pro+ TWS』WEB CMソング

CDショップ 予約購入先着特典

  • ※全国のCDショップにて2022年11月30日(水)発売 スカート『SONGS』をご予約・ご購入のお客様に、先着で上記オリジナル特典をプレゼント。
    各店舗でご用意している特典数量には限りがございますので、お早目のご予約をおすすめいたします。
  • ※特典は数に限りがございますので、発売前でも特典プレゼントを終了する可能性がございます。
  • ※一部取り扱いの無い店舗やウェブサイトがございます。ご予約・ご購入の際には、各店舗の店頭または各サイトの告知にて、特典の有無をご確認ください。
LP盤
PCJA.00176/12inch LP/4,000円+税
[収録曲]
Side-A
1. 十月(いちおう捨てるけどとっておく)
2. 駆ける
3. ODDTAXI feat. PUNPEE
4. 粗悪な月あかり
5. この夜に向け
6. 標識の影・鉄塔の影

Side-B
7. 架空の帰り道
8. Aを弾け
9. 私が夢からさめたら
10. 背を撃つ風
11. しるしをたどる
12. 窓辺にて
13. 海岸線再訪

Official Interview

『SONGS』オフィシャルインタビュー開く
――まずは新アルバム『SONGS』のリリースおめでとうございます。スカートは2020年に自主制作時代の楽曲をアップデートした『アナザー・ストーリー』を発表していますが、新曲を収録したアルバムとしては2019年の『トワイライト』以来、今作が3年以上ぶりのリリースとなります。この3年間は、日常生活という面においても、音楽活動という面においても、新型コロナウイルスに大きく振り回された期間だったと思うのですが、どのようにお過ごしでしたか?


ろくでもない感じでしたよ(笑)。ずっと家でゲームしてましたね。


――ライブやイベントの中止も相次ぐなかで、モチベーションの変化はありましたか?


最初は、単純にライブが中止になるのが本当に嫌でした。それからしばらく経つと、ライブをやってもやらなくても気分が沈むようになったんです。やっぱりやらないと落ち込むんですけど、やったとしても「人を集めちゃってるな」って心配しながらのライブになってしまって……。それで、2021年は静観する時期にしようと思って、ライブの予定をほとんど入れなかったんですよね。


――『トワイライト』のリリース以降、ライブバンドとしての手応えを感じ始めたタイミングでのコロナ期間だったかと思います。在宅でのライブを配信するなど、試行錯誤しながら可能性を模索している印象も受けました。


そうですね。でも、どれもしっくりこなかったんです。在宅のライブは何度かやるうちに小慣れてはきたし、スタジオでやった無観客の配信ライブもそれなりに手応えはありました。ただ、それらを自分のなかでどう位置づければいいのかわかんなくなっちゃって。それにはとっても困ってましたね。


――そこから、次第に前向きな気持ちに変わっていった?


いろいろと試している裏で、シングル曲とかをつくっているうちに、自分のなかでだんだんと「ライブはやるしかないだろう」みたいな気持ちに変わってきたんです。それからですね、新しいアルバムをつくろうと考えるようになったのは。


――新アルバムをつくろうというビジョンは、いくつかのシングル曲をリリースするうちに見えてきたのか、それとも、そもそもアルバムを見据えてシングル曲をつくっていたのか、どちらでしたか?


それはどっちもありますね。『海岸線再訪』っていうシングルをつくったときに、そろそろ次のアルバムを考えなきゃと思うようになって、2022年は絶対にアルバムを1枚出すって強く決めたんです。そこから、ありがたいことにタイアップの話もいただけるようになって。ただ、これらの曲をアルバムにまとめるってなったときのために、あまりキャラ被りがないようにつくらないとダメだと思ったんですよね。クライアントの期待に応えつつ、アルバムとしても成立するように、二兎を追ったんですよ(笑)。そういう野心を持ってアルバムをつくっていきました。


――タイアップの曲をつくるときにも、アルバムのことは意識していたんですね。


そうです。このままいくと「標識の影・鉄塔の影」と被っちゃうとか、そういうことを考えながらつくっていました。もともとは、アルバムにタイアップの曲を全部入れるつもりはなかったんです。でも、どれもコロナ禍で書いた曲だし、どれかの曲を入れないっていうのが、自分のなかで収まりが悪かったんですよね。だから、全部入れるかたちでアルバムをつくれないかなと思って、そこは頑張りました。


――タイアップがついている分、作品のイメージと結びついて各曲の個性が強くなりますよね。それらをひとつのアルバムにまとめるために、いろいろと考えられていた。


「ODDTAXI」とかは、PUNPEEさんとの共作ということもあって、最初はボーナストラックとして収録するつもりだったんです。でも、実際に録音していくと「これはアルバムのなかに入っていてもまったく問題ない」という判断に自分のなかで至って。そうしたら、やっぱりいい具合にまとまりましたね。


――スカートの楽曲についてですが、特にメジャーデビュー以降、外に視界が開かれて、より多くの人に届けたいという気持ちが強く表れるようになった気がしています。それは『トワイライト』にも受け継がれ、『SONGS』も地続きなアルバムだという印象を受けました。同時に、自分の現在地に戸惑いながらも、前を向いて進んで行こうという歌詞も増えてきたように感じています。やはりここには、コロナ禍によって失われた期間への思いがあったんでしょうか?


これは難しいところですね。「海岸線再訪」とかは、コロナ禍の曲をつくったつもりはなかったんですよ。でも、言われてみればそういうふうにも思えて。最初はすごく迷ったんですよね、今の時代を切り取ったように思われたらどうしようって。でも、スカートは昔からこういう後ろ向きだか前向きだかわかんないみたいな曲が多かったから、問題ないだろうと思ってそのままにしたんです。


――特に前向きな曲をつくろうという意識はなかった?


そうですね。だから、ポジティブな曲って言われると「えっ!」って思っちゃうんですよね。「海岸線再訪」は歌詞で「打つ手はなし!」って言ってますからね(笑)。でも、自分の心境とクロスする部分があるとすれば、この言葉だと思います。僕はいつも、自分の思っていることは曲全体の1割くらいに留めようと思ってるんですけど、その1割はこの「打つ手はなし!」ですね。


――ここが澤部さんにとってノンフィクションの部分なんですね。


ただ、この「打つ手はなし!」も決して後ろ向きじゃないというか。「もう手詰まりです」みたいになったことによって次に進めることが多分にあるので。ネガティブな感情だけじゃないものを描けたなっていう達成感はあります。


――それは『SONGS』というアルバム全体に共通する感覚ですか?


もちろん、全部じゃないですけど、自分のなかでそういう曲はいくつかありますね。「私が夢からさめたら」とかもそうですし。そのモードは「駆ける」から始まったんじゃないかって思ってます。「諦めて前を向くよ」っていう歌詞が自分のなかで引っかかったんですよね、自分で書いておきながら。それがいろんな曲に拡張していって、自然とポジティブさを感じる表現が増えていったんじゃないかなと思います。


――『SONGS』は13曲中10曲がタイアップ曲というアルバムです。アニメ、演劇、映画、ドラマ、CMなど、あらゆるジャンルの作品でスカートの楽曲が使用されることについて、どう思われていますか?


信じられないっすよ(笑)。「どういうことですか?」っていう感じですね。テレビをパッとつけたら音楽を担当した金麦のCMが流れていたりして、とにかく不思議です。


――澤部さんはたびたび、「余白」や「空白」がある音楽や漫画に惹かれると話されています。『SONGS』の楽曲の歌詞にもそういった言葉が散りばめられていますよね。スカートの曲も、余白があるからこそ想像の余地ができて、自分の心境に合わせて聴くことができる。だからこそ、どんなジャンルの作品においても求められているのではないかと思うのですが。


そうだといいなって思いますね。余白があることによって、バラバラのタイアップ曲でも『SONGS』というひとつのアルバムにまとめることができる。その反面、スカートをよく聴いてくれている人からしたら、タイアップの曲を詰め込んだ、まとまりのないアルバムだと思われるんじゃないかという不安も少しあって……。


――僕は『SONGS』を初めて通して聴いたとき、号泣してしまったんです。それも、シングルとしては何度も聴いていた曲で。知っている曲が多いにもかかわらず、アルバムを通して聴くことで、ひとつひとつの曲が持っている力がさらに強まっているように感じたんですよね。


すごくうれしいです。僕もそう思っているんですよね。それこそ、「背を撃つ風」とかはアルバムに入れようかすごく迷ったんですよ。『海岸線再訪』を出したときは、「この夜に向け」か「背を撃つ風」、どっちかはアルバムに入れない方が、シングルとしての面目も立つんじゃないかと思っていたんです。でも、アルバムの流れで聴くと「背を撃つ風」がすごくいい曲に思えてきて。


――僕が泣いてしまったのも、まさに「背を撃つ風」でした(笑)。


本当ですか!(笑)


――タイアップ曲のつくりかたは、作品によって異なるんですか?


つくりかたという意味では、ほとんどいっしょですよ。依頼があって、どういう方向性かっていうのを確認して。そこから台本とか映像とかの資料をもらって、使用する場面を教えてもらいながら、それなら歌から始まる方がいいとか、イントロがあった方がいいとか、だんだん固めていくことが多いですね。


――イメージやオーダーがある分、やりづらいこともあるんでしょうか?


むしろ、めちゃくちゃやりやすいですね。もう30歳を越えると、自発的に曲なんて出てこないんですよ(笑)。でも、こういう曲を書いてほしいって言われることによって、自分ではまだ開けていなかった引き出しみたいなものが見えてくるような気がして。そういう意味で、タイアップをもらえるっていうのは、自分のクリエイティビティにおいてとても重要だなって思いました。


――『SONGS』というアルバムタイトルについては、かなり悩まれたとうかがっています。


最初は、とにかくシンプルかつ抽象的な言葉がいいなと思っていて。それにふさわしい言葉をいろいろ探すんですけど、どれもピンとこなかったんです。「SONGS」っていう言葉は早い段階で浮かんでいたんですけど、それはそれでピンときすぎて困ってました(笑)。はじめは、けっこう後ろ向きだったんですよね。アルバムとしてうまくまとめられないかもしれないから、バラバラの「SONGS」なんだっていう予防線を張るみたいな感覚。でも、アルバムをつくっていく過程で、これはもう「SONGS」としか言いようがないなって思うようになってきたんです。


――最初はバラバラの曲が集まった「SONGS」だったところが、曲が出揃うと全部ひっくるめて「SONGS」だとしか言いようがないアルバムになったと。ジャケットのアートワークがいつもと少し違う感じがするのも、いままでとは異なる感覚でつくったアルバムだからでしょうか?


そうですね。いつもだったら僕が好きな漫画家さんとかに頼むことが多いんです。例えば、「窓辺にて」がアルバムのタイトルだったら、それに合った絵を漫画家さんに描いてもらえばいいんですが、今回はそうじゃない気がして。イラストレーター名鑑やイラストレーションの雑誌を開きながら話し合っているときに、たまたまyasuo-rangeさんの絵を見つけて、「この人めちゃくちゃいい!」ってなったんです。色味とかは賑やかで華やかな感じなんだけど、どこか寂しさがあって。それが、すごくスカート的だなと思ったんですよね。


――アルバム全体についてお聞きしたところで、次は1曲ずつお話を聞いていきたいと思います。M1「十月(いちおう捨てるけどとっておく)」は、ダウ90000の演劇公演のエンディングテーマです。作品のなかで十月は、多浪生が不安になって予備校を訪ねてくる時期として描かれていましたよね。


「十月」って、自分のなかで昔から印象的な言葉のひとつなんです。大好きな漫画家・森雅之さんの短編集『夜と薔薇』の「ブレイクファースト」という話で使われていたのが印象に残っていたり。ダウ90000の蓮見さんと打ち合わせしているときに、十月の話になるということは聞いていて、ついにこのカードを切るときがきたかなって思ったんです。「十月」という思い入れのあるテーマを主体に曲をつくってみようと。


――演劇の台本を読んだうえで制作に取り掛かったんですか?


その時点では、まだ台本ができあがっていなかったんです。半分ぐらい書きあがった台本を読みながらつくりましたね。蓮見さんに曲を送ったあと、完成した原稿を送ってくれたんですが、やっぱり舞台で観たいなって思って。半分知っていて半分知らないみたいな状態で観に行きました。後半の展開がわからなかったので、実際に観るまでは作品の内容と曲がマッチしているのか、けっこうヒヤヒヤしてましたね(笑)。


――シンリズムさんのギターソロも強烈です。


この曲には、ニューウェーブっぽい変態ギターソロが突然入ってくる感じがいいなと思ったんですよね。シンリズムくんはKIRINJIとかで変態的なギターを弾いていて、それでお願いしました。


――M2「駆ける」は前アルバム『トワイライト』から少しして発表された曲ですよね。シンプルなようでいて、サビが1回だったりと変わった構成の曲です。


そうですね、いかれてますね。2回目のAメロも1回目と完全にいっしょではないという、そういう感じも気に入ってます。うまくいかない感じやもどかしさを表現したかったので、あまり繰り返しのない構成にしました。


――続くM3は「ODDTAXI feat. PUNPEE」です。こちらはアルバム用にアレンジが変わっています。ホーンの音も入って、豪華コラボ感が増している印象を受けました。


実は、ドラムとかも全部生音に差し替えてるんです。PUNPEEさんが編曲してくれた以前のバージョンとは印象がガラッと変わっていると思いますね。


――ラップ部分のリリックが微妙に変わっているのも楽しいですよね。


やってくれましたよ。本当に、遊び心満載のニクい男です。


――HIPHOPのアーティストとの共作という点ではいかがでしたか?


最初はどうなるんだろうってちょっと心配だったんですが、あっという間にできましたね。当時は大スランプの最中だったので、やってみるまでは本当に苦しかったんですけど……。そういうときに、いっしょにつくってくれる人がいて助かったというのが本音です。


――M4「粗悪な月あかり」はアルバム初出の曲です。イントロのアルペジオからそのまま歌に入っていく曲は、これまでのスカートにはあまりなかったような感じがして新鮮でした。


確かにそうかもしれないですね。でも、あんまり意識はしてなかったです。最初はもうちょっと単純だったんですが、テンションコードを入れようとか、いろいろ足し算とか引き算をしているうちに、結果的にアルペジオだけになっていきました。


――『SONGS』のなかでは後半につくられた曲とのことですが、アルバムの空白を埋めるピースとしての位置づけだったんでしょうか?


そうですそうです。今ある曲のなかで、どういう要素が足りていないかなって思いながらつくりました。


――足りていないと感じた要素はどのようなものだったんですか?


単純に、暗い曲があまりないなと思って。『トワイライト』で言う「沈黙」みたいな、ちょっと重めの曲がほしいと感じたんです。同時期にプリファブ・スプラウトにすごくハマっていたので、そういうものをかたちにしたいなとも思っていたんですが、メンバーにはそれはあまり伝わらなかった(笑)。


――M5「この夜に向け」は、「大きなサイズの店 フォーエル」との異色のタイアップです。


これはタイアップを一番無視した作品ですね(笑)。クライアントとやり取りしているうちに、「いつも通りにやってくれればいい」という感じになって。これじゃダメだろうなと思いながら提出したら、意外にも気に入ってくださったんです。曲自体には手応えがあったんですけど、気に入ってもらえてるってわかるまでは本当に心細かったですね。自由にやらせてもらえてうれしかったです。


――M6は「標識の影・鉄塔の影」です。個人的にはスカート屈指の名曲だと思っています。


正直、僕もこんなにいい曲だと思ってなかったです。「駆ける」のカップリングだったんですが、そっちが良すぎてあまり聴いてなかったんです。完全に過小評価してましたね。


――「駆ける」とは対になっている曲なんでしょうか?


制作した時期は近いけど、作品としてはまったく別ですね。「駆ける」は『トワイライト』以降の曲なんですが、こっちは『トワイライト』の余熱でつくった自覚があります。


――M7「架空の帰り道」は、テレビ東京ドラマ『絶メシロードSeason2』の主題歌です。そういう意味で、前シーズンの主題歌であった「標識の影・鉄塔の影」のことは意識しましたか?


もちろん意識もしたんですが、切り離さないとアルバムが大変なことになるとは思ってました。『絶メシロード』のテーマとしては、「標識の影・鉄塔の影」以上のものはつくれないとも思っていたし。新シーズンの主題歌にもロードムービー的な要素はほしいと言われていて、フォーキーなものにしようかとも思ったんですが、そこから「もっと考えろ!」と自分に言い聞かせたんです。そうやって考えているうちに、ちょっとルーズなテンポでソウル感を入れたら、ブルーな雰囲気が滲むのではないかと思いつきました。しっとりしてるんだけど、リズムは立ってるんですよね。


――M8の「Aを弾け」というタイトルは、「Aコードを弾け」という意味ですよね。


そのまま、そういう意味です。なんでそうなったのかはわからないですけど、「Aと言われたらAを弾くだけだ」ってノートの隅に書いてあったんです(笑)。これは面白いなと思って、そのフレーズがたまたまメロディにもバッチリとハマったんですよね。


――『SONGS』のなかでは最後にできた曲ですか?


そうですね。「ODDTAXI」がボーナストラックじゃなくなった段階で、もう1曲あった方がいいなと思って。単純に、ファンの方にとって初めて聴く曲が少なすぎると。それで、アップテンポとまではいかないけれど、短くてサッと終わる曲がほしいと思ったんです。


――短くてサッと終わるという点では、『ストーリー』の収録曲にも通じるものを感じました。


確かに、10年前くらいのスカートの感じがあるかもしれないですね。


――続いてのM9「私が夢からさめたら」は、文学ムック「ことばと」に寄稿された詞に曲をつけたものです。


「ことばと」への寄稿の依頼をもらったときは、まさにスランプのど真ん中で、最初は断わるつもりだったんです。でも、そうなると「書けませんでした」って返事をしなくちゃいけないじゃないですか。そのメールの文面を考えるのが本当に辛くて(笑)。こんなんだったら歌詞を書いた方がマシじゃねえかって思って、書いてみたらできたんですよ。それも10分くらいでできちゃって。


――メールか歌詞か、どちらを書くのが大変かを天秤にかけたんですね(笑)。「ことばと」で文章として読んだときには寂しい詞だと感じたんですが、曲になるとエモーショナルな印象を受けました。澤部さんが登壇された映画『窓辺にて』の舞台挨拶では、当初この曲を提供しようと考えていたという話もありましたが。


この曲は『SONGS』のなかでは早い段階でできあがっていて、映画に合いそうだと思って今泉(力哉)監督に聴いてもらったんですよね。でも、せっかくだったら映画を観てからつくった方がいいなと思って、「窓辺にて」を書き下ろすことにしました。


――M10「背を撃つ風」はParaviオリジナルストーリー「最愛のひと~The other side of 日本沈没~」のイメージソングです。サビのコーラスが印象的な曲ですよね。


すごくいいですよね、(岩崎)なおみさんのコーラス。僕も気に入ってます。(佐藤)優介の大サビのところのピアノも良すぎます。これは、最初はドラマのイメージソングじゃなくて、ドラマ内で登場人物が歌う曲として依頼されたんです。それを気に入ってくださって、イメージソングにしていただいて。めちゃくちゃうれしかったですね。


――ドラマ内では、世界中で聴かれているヒットソングという設定でした。


本当にやめてくれ(笑)と思ったんですが、どうにかやるしかないと。「遠い春」がバカ売れした世界線での次のシングル、という設定です。自分のなかで「とにかくいい曲をつくるぞ」と息巻いていたのは、実は「海岸線再訪」とかではなく、この曲なんですよね。


――M11「しるしをたどる」では、「空いた/すきまは埋まりそうもないけど」という、今の時代において切実に響く歌詞が登場します。ただ、先ほどおうかがいした通り、コロナ禍のことはあまり意識されていないんですよね。


そうですね、そのときにはもう吹っ切れていたと思います。


――こちらはテレビドラマ『名建築で昼食を 大阪編』のエンディングテーマです。タイアップを意識したところはありますか?


ドラマの前シーズンでは、浦上想起くんの曲がエンデイングに使われていたんです。その曲がかっこいい感じだったので、今回は少しモサッとさせてもいいかもしれないと思って、フォーキーな路線でつくりました。僕としては、その路線での正解が出たんじゃないかと思ってますね。


――M 12『窓辺にて』は、同名タイトルの映画のエンディングテーマですね。今泉力哉監督からは何かオーダーがありましたか?


今泉監督からは「速すぎない方がいい」と言われたくらいで、ほとんど指示はありませんでした。だから、映画を観てどういう曲が返ってくるのかを楽しむ人なんだなって思いましたね。単純にフォーキーな曲だとつまらないから、ちょっとオルタナ感を出すことは意識しました。


――サビの展開とかにはオルタナ感がありますよね。まっすぐではない感じが映画にも合っています。


そうそう、そこにはすごく気を使ったんです。あの映画の一筋縄ではいかない感じをどう音楽で表現しようかなって思ったときに、下に落ちる転調みたいなのがうまく効けばいいなと。


――今泉監督もおっしゃってましたが、ラストの「空白を迎えようにも/ひとりじゃ抱きしめられない」というフレーズが映画全体を絶妙に表していますよね。


これが出たときは、さすがにやったと思いましたね(笑)。


――澤部さん的にも手応えがあったんですね。ちなみに、主演の稲垣吾郎さんは意識しましたか?


もちろん、バリバリ意識しましたよ。あの映画は稲垣さんじゃなきゃ成り立たない気がしていて。あの独特の佇まいですよね。それをどうにか曲に落とし込みたいと思ってました。


――アルバムのラストを飾るのはM 13「海岸線再訪」です。この曲を締め括りに選んだ理由はありますか?


ここ数年のスカートを象徴する曲だと思ったからです。スカートはアルバムの最後にそういう曲を入れがちなんですよ。「シリウス」だったり「静かな夜がいい」だったり。あとは、ループで再生することを考えたときに、この曲から1曲目に戻る感じが気持ちよかったというのもあります。


――「海岸線再訪」ができるまではスランプが続いていたんですよね。


そうですね、かなりきつかったです。正直、どうなるかまったくわからなかったですね。


――それが吹っ切れたきっかけはあったんですか?


明確なきっかけは思い出せないけど、そうしないとダメだったんでしょうね。コロナ禍の影を振り払うように歌詞を書き始めました。ちょうどこのときくらいから、10代の頃から好きだったポップミュージックというものに対する目線が改めて深くなっていたような気がします。


――シティポップ関連の取材も増え、複雑な感情を持ちながらも「ポップミュージック」と向き合ってきた数年間だった?


「ポップであろう」っていうのは、ここ数年に限った話ではなく昔から常々考えていることなんですけどね。そりゃ、20年経ったら「ノイズしかやりたくねえ」って考えているかもしれないですけど……(笑)。少なくとも今は、3分前後で終わるポップミュージックへの執着はあります。そこに対して、人生を棒に振る覚悟も持っています(笑)。


――リスナーの方に向けて、『SONGS』をどんなふうに聴いてほしいという思いはありますか?


まずは気楽に聴いてほしいですね。それで、皆さんの心に引っかかるものがあれば繰り返し聴いてもらいたいです。自分にとって、ポップミュージックの価値ってそれ以上でもそれ以下でもないんです。聴き手が誤解して聴くことで、つくった側の意図を越えて新しい発見があったり、見ようとしても見えなかった景色が見えてきたり。僕はそれがポップのあるべきかたちだと思っていて。難しいことは考えずに1回聴いてみてほしい。皆さんがそれをどう感じるか、あとは任せたっていうのが本音ですね。


――アルバム全体を通して聴いてほしいという気持ちは?


もちろん、スカートのアルバムは全曲を通して聴くことで新しい景色が広がるようなものをつくっているつもりなので、そうしてもらえたらすごくうれしいです。ただ、音楽の聴き方がこれだけ自由になっている時代なので、1曲でも好きな曲があれば、それを繰り返し聴いてもらうというのでも全然いいと思います。「Aを弾け」がTikTokでバズるとか、そういう世界も見てみたいですね(笑)。


――最後に、もうすぐ今年も終わりますが、2023年はどんな年にしたいですか?


『SONGS』をつくっている段階で、3年半ぶりのアルバム制作に苦労しているという話をムーンライダーズの鈴木慶一さんにしたんですよ。そのとき、「あんまり気負わないでスッと出した方がいいよ」と言ってもらえて、それがすごく胸に響いたんですよね。そんなこともあって、早くも次のアルバムは見据えています。まだ曲ができているというわけではないので、さあここからどうしようという感じですが(笑)。『SONGS』の曲を引っ提げてツアーもする予定なので、ずっとスカートの曲を聴いてくれている方にも、今作から興味を持ってくれた方にも、ぜひ遊びにきてほしいと思います!




上垣内舜介(ライター・編集)

Live Information

注意事項 / 備考
※枚数制限 : 先⾏ 2枚/⼀般 2枚(ダウンロードは3⽇前、同⾏者情報は分配時に取得)
※⼊場時、別途ドリンク代徴収させていただきます。 ※電⼦チケットのみの取り扱い、店頭販売なし ※危険⾏為・迷惑⾏為の禁⽌
※⼩学⽣以下⼊場不可、中学⽣以上チケット必要 ※購⼊者以外の⼊場はお断りさせていただきます。
※開催時の情勢により、客席のレイアウト、レギュレーションなど変更になる可能性がございますのでご了承ください。


■チケット料金(ドリンク代別) 4,500 円
券種オールスタンディング
■【抽選制】封入先行
11/30(水)12:00〜12/11(日)23:59
■【抽選制】オフィシャル1次先行(イープラス)
12/13(火)18:00〜12/26(月)23:59
■【抽選制】オフィシャル2次先行(イープラス)
1/3(火)18:00〜1/15(日)23:59
■⼀般発売1/28(土)10:00
イープラス受付URL(先行、⼀般共通) https://eplus.jp/skirt2023/
■ツアー日程 スカートHP http://skirtskirtskirt.com/

※枚数制限 : お一人様1公演につき2枚まで
※電子チケットのみの取り扱い、店頭販売なし
※危険行為・迷惑行為の禁止
※小学生以下入場不可、中学生以上チケット必要
※開催時の情勢により、客席のレイアウト、レギュレーションなど変更になる可能性がございます。

Movie

  • 「Aを弾け」

  • 「"SONGS" ダイジェスト・トレーラー」

  • 「窓辺にて」

  • 「ODDTAXI」

  • 「海岸線再訪」

Profile

シンガーソングライター澤部渡によるソロプロジェクト。2006年にスカート名義での音楽活動を始め、2010年に自主制作による1stアルバム「エス・オー・エス」のリリースにより活動を本格化。以降もセルフプロデュースによる作品をコンスタントに制作し、2016年にカクバリズムからリリースした「CALL」は全国各地で大絶賛を浴びた。2017年にはメジャー・ファースト・アルバム「20/20」をポニーキャニオンから発表。また澤部はスカート名義での活動のほか、ギター、ベース、ドラム、サックス、タンバリンなど多彩な楽器を演奏するマルチプレイヤーとしても活躍しており、yes, mama ok?、川本真琴、スピッツやムーンライダーズのライヴやレコーディングに参加。これまでに藤井隆、Kaede(Negicco)、三浦透子、adieu(上白石萌歌)ら他アーティストへの楽曲提供およびドラマや映画の劇伴制作にも携わっている。2022年11月公開の今泉力哉監督・稲垣吾郎主演の映画「窓辺にて」の主題歌として「窓辺にて」を書き下ろしている。2022年11月30日4thアルバム『SONGS』をリリース。

澤部渡Twitter

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